菫と欺く ムシトリスミレ
(2022/6/23 秋田駒ヶ岳)
虫取菫(むしとりすみれ)
タヌキモ科ムシトリスミレ属/多年草
虫を捕って消化吸収し栄養にする食虫植物で、菫(すみれ)に似た花なので『虫取菫(むしとりすみれ)』。
根元に星型に広げている明るい黄緑色のロゼット葉には、表面にツヤツヤな光沢がある。この光沢の正体は粘液に覆われた腺毛で、ここでトリモチのようにして虫をくっつけて捕らえる。葉の縁が巻き上がっているのは、この粘液がこぼれ落ちないように、又は、小さな虫が葉の上から逃げられないようにする為か。実に上手くできている。
(2022/6/23 秋田駒ヶ岳)
スミレに花が似ているところから“スミレ”の名がついてはいるが、スミレ科ではなくタヌキモ科の別系統の植物。
いくらなんでも、いきなりスミレが食中植物に進化・変化したりはしない。花も、スミレというよりは、全体的に平べったい感じなどが、ムラサキサギゴケ(紫鷺苔)やカキドオシ(垣通し)等の花にも似ているように思うが、一応スミレっぽい茎の形をしており花には距もある。
スミレの名がつけられたことへの疑問は以前から既にあって、日本山岳会の初代会長である小島烏水(1873-1948)が「先に本草学者が"ミヤマミミカキグサ(深山耳掻草)"もとい、"ネバリバソウ(粘り葉草)"と名付けたが、後に他の植物学者が"ムシトリスミレ"と名付け直したのが定着した。でも、これってスミレ科じゃないしブツブツ…」といった内容のことを、随筆の中で書いている。
「花の名前学(仮)」にも偉大な先達がいたということで、勇気づけられる思いがしないこともない。
北海道から四国にかけて、亜高山~高山帯の湿気のある岩場などに生え、花期は6~8月。
花言葉:幸福を告げる/欺きの香り
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